こんにちは。コワーキングスペース茅場町 Co-Edoの運営代表者の田中弘治です。
これまで当アドベントカレンダーでは、次のような記事を書いてきました。
アドベントカレンダーあるあるとして「アドベントカレンダーを立てた人は、12/1もしくは12月上旬に書くことになる」というのがありますが、この記事も例に漏れず12/3(日)に書くことになりました(笑)タマニハウシロノホウデカイテミタイ (´・ω・`)
何年か前より運営者ばかりがアドベントカレンダーを書くことになってしまっていたので、「運営者限定」と「一般向け」の2種類のアドベントカレンダーを用意していたのですが、今年は一般向けを用意できませんでした。毎年読んでいる方の記事が読めなかったのは残念ですし、自分で立てればよかったと反省しています。
気を取り直して。
今回は「第4世代型をはじめとするコワーキングスペース業界を取り巻く状況の変化に飲み込まれないように、自分のスペースの理想を追求するために必要なたったひとつのこと」というタイトルで書いていきたいと思います。(タイトルが長い!)
コワーキング業界をとりまく状況の変化
ここ最近、急速にコワーキングの話題を目にする機会が増えてきています。「コワーキング」という言葉が一般のひとの馴染みのなかった時代は過ぎ去り、(といってもまだ日本で最初のコワーキングスペースの
カフーツができてからまだ今日時点で8年も経っていないのですが)ニュースで取り上げられていて話題になることも多いです。
ざっとあげただけでも、以前にまして、大手企業や有名企業からの参入や、東京以外の地域でのニュースをよく耳にするようになってきました。
コワーキングスペースの規模が大きいと、利用者にとっては、そのスケールメリットを活かした利便性を享受できるため、ランドマークとなっているビル内にあったり、これまででは想像もできなかったサービス(ビールが無料で飲めたりといった)が利用できたりします。
一方で従来型の(いわゆる第1世代・第2世代型の)コワーキングスペースも、それぞれがスペースの良さを改善し続けているのですが、ニュースバリューとして限界もあり、どうしてもわたしたちが目にする機会は限られます。
結果として派手なニュースが世間を騒がし、コワーキングスペースそのものの認知度は上がっていますが、どんどん世間一般のコワーキングスペースのイメージは大手の提供するスペースが占めていっている気がします。
第4世代型のコワーキングスペース
そんななかわたしは2017年5月に開催した「コワーキングスペース運営セミナー」にて、「コワーキングスペースの世代論と第4世代型の潮流について」と題したお話をしました。
簡単にいえば(わたしの定義する「第4世代型」とは)、単なる第3世代型の進化系というスペースではなく、コワーキングからの「直接的な収益性を求めない」スペースとなります。
3年前に公開した世代論から時が過ぎ、新しいモデルのコワーキングスペースがいくつか立ち上がったことで、それが今後増えていくのではないかという予想のもとに発表いたしました。(上記スライドからは省きましたが、セミナーでは、どのように運営者が世代論を自スペースの発展に活用するのかなどをお話しています)
ふたをあけてみると、たった半年で、Googleが期間限定ながら同趣旨のスペースの提供をしたり、そのほかIT系の企業も次々と参入を表明しています。
当初「期間限定での無料」をうたっていたYahoo! JAPANの
LODGEも、無料期間の延長を繰り返すことで、従前より予想された通り、実質的な無料利用が可能となっています(2017年12月3日現在、2018年3月まで無料の
アナウンスがされています)
このような「直接的な収益性を求めない」スペースというのは、今後も増えていくというのは間違いない状況といえるでしょう。
リモートワーク・テレワークが本格的に浸透してきつつある
IT系の企業には、オフィス外で業務をするリモートワークというワークスタイルが浸透しています。
わたしは従来、そのイメージから、スタートアップやベンチャー企業といった、比較的規模の小さな企業からこのような働き方が広がっていき、大手企業については(コンプライアンスやマネジメント上の課題があるため)なかなか広まらないのではないかと考えていました。
しかし、Co-Edoの利用者も徐々に多様化してきたことで、そういう方々から話を伺うと、どうやらわたし自身の予想とはまったく別の状況が(一部で)生まれつつあるのではないかと感じています。
基調講演を行ったネスレ日本のほか、サントリー・日産・リクルートなど、それぞれのテレワークの取り組みについて話を聞いてきたのですが、従来「作業場所を限定しないことで生産性をあげる」ことのみにフォーカスしていたのが、「多様なワークスタイルを認めることにより(おもに人材面の)経営課題を解決する」という視点も加わってきていて、どちらかというとその面のほうが喫緊の課題として捉えられているという印象をもちました。
とすると、この(一部の人によっては若干古めかしくも感じる)テレワークというワードが、にわかにニュース等でも再度耳にするようになってきたのも分かります。
「働き方改革」という旗印のもと、社会の変革の圧力が、いよいよ本格化してきたことで、ベンチャー企業によるワークスタイルの変化と、並走する形で、大手企業のなかでも危機感の強い企業から急ピッチで制度化の試行錯誤が行われているのではないでしょうか。もしかしたら企業の担当者も当初は「そんなことをいっても社内には導入を促進する雰囲気が皆無」といった時期もあったと思うのですが、「体力的にも精神的にも楽な環境のほうが良い」という「数年したら当たり前の事実」に、徐々に気づく人が増えたのではないかと、勝手に想像しています。担当者としては「以前よりやりやすくなってきている」という実感は強く感じていることでしょう。
「一般的なテレワークや在宅勤務の話を聞くと、在宅勤務をしたい場合は事前に申請をして、会社や上司の許可を得てから実施するらしい。それも何か明確な理由が必要だったりするので、誰でも全員がという訳にはいかない。」
という一節に表れているのではないかと思います。
一部の事例を除いて、まだまだ「許可を取って」利用する制度であり、数年後浸透することは間違いなくとも、もうすこし進化圧が必要なのではないかという懸念もあります。
今後「従業員がオフィス以外で働ける制度」を設ける企業は増えていくでしょう。ここには一定の需要が存在し、そういった方々の受け皿が従来のコワーキングスペースとなる可能性も充分にあります。ただ、設備の良いスペースや多くの拠点を利用できる契約が可能なスペースのほうがよりマッチしそうです。
余談:プレミアムフライデーについて
2017年2月より実施された「認知度は異常に高いけど、実施率は異常に低い」
プレミアムフライデーという制度があります。この制度の問題点や、制度自体の是非はともかく、「毎月末金曜日は早く帰ろう」というこの趣旨自体は、従業員側の視点において、本来的に「どんどん普及してほしい」という類のものなのではないかと思います。(ここでは消費を刺激する云々についてはふれません)
しかしながらプレミアムフライデー推進協議会事務局が6月に実施した調査によると、プレミアムフライデーに「賛成する」もしくは「ある程度賛成する」というひとは合計でも5割もありません。はっきりと「賛成しない」「あまり賛成しない」というひとが過半数という結果です(
pdf)
経済産業省が主導で、世間的な要請とはまったくかけ離れたところで、なかば強引に導入されたがゆえの反発があるとはいえ、個人的にはこの風潮は不思議でなりません。
テレワークや働き方改革を推進する理由のひとつに、通勤やメンタル面等のストレスフルな環境からの脱却という面もあり、その意味で、プレミアムフライデーというのは間違いなく総論賛成されてしかりだと思うのですが、いかがでしょうかね。
まあ個人的にはそんなことはどうでもよくて、日中からビールを飲んでも良い日という位置づけでしかありませんが(笑)
ますます従来型のコワーキングスペース運営は大変になっている!?
話を戻しまして。
そんな環境のなか、コワーキングスペースの数自体は増える一方という印象です。現在いくつのコワーキングスペースが存在するかは分かりませんが、猫も杓子もコワーキングスペースをうたっているのではないかという状況で、一部の界隈では
こんな話題で盛り上がるような状況にもなりました。
スケールメリットを駆使して利便性の高いスペースを提供しているスペースが増えてきた一方で、わたしたちのような従来型のコワーキングスペースは徐々に大変さが増している気がしてなりません。
コンビニのように、最寄りのコンビニ以外は使わないというような状況と似た感じになってきたのかもしれません。つまり、コワーキングスペースが増えてきたことで(少なくとも都内では)なるべく自分の生活圏内のスペースを利用するという傾向がみられます。
CW理論の記事内で書いた「たとえ自宅から遠くても行きたくなるコワーキングスペースというのは、他よりもC要素が高いスペースだといえる」というのは変わらないものの、徐々にC要素よりもW要素の比重が高くなってきたかもしれません。
以前であれば「利用して、スペースを支援する」という面もあったと思うのですが、利用者視点で見ると、徐々に「オーナーを知っている」とか「顔なじみの利用者がいる」という要素よりも、「どっちが便利か」という単純な比較をするひとが増えているという、(残念なものの)当たり前のことが行われてきつつある、ということなのかもしれません。
コワーキングスペースの運営は収益性の面でとても大変で、この点においては第3世代型についても変わらないはずです。しかし、収益性以上に大変なのが、体力的な疲弊であったり、(あまり言われることがありませんが)運営者側の精神的な疲弊もあります。
仲の良かった利用者とふとしたことがきっかけで結果的に不幸な別れがあり、疎遠になったというひとは、運営経験の長さに比例して多くなっていくことでしょう。
もちろんそんなことを気にしていては参ってしまうので、普段はそんなに意識しないのですが、わたしの場合でいうと、たとえばとても楽しいイベントが終了し、片付けを終えて帰り道の道すがら、突然にフラッシュバックして辛いことを思い出し、泣きたくなることもありました。
体力面でも、年中無休でオープンしてきたCo-Edoではありますが、今秋、私自身が救急車で運ばれそのまま緊急入院する事態となり、いつまでも現状の体制で運営できるのかという不安もあります。(そのとき助けていただいた方々、本当にどうもありがとうございます)
想定通りに売上があがらず、不安に押しつぶされそうになるというかたもいらっしゃるでしょう。他スペースの華やかな投稿に心がざわつき、ついSNSの投稿が滞ってしまったりすることもあるでしょう。
それでも歯を食いしばり、いつも利用してくれているひとを思い浮かべ感謝をし、日々やるべきことを粛々とこなすことでしか、その状況を脱することはできません。
そのうえで、いつまでも同じことをやっていても、魅力的なスペースであり続けることはとても難しいのです。
利用者のことを常に意識し、変えるべきところを変え、発展をしていかなくては、愛されるスペースであり続けることはできないでしょう。
自分たちの大事にしているところは変えずに、一方で利用者のニーズに合わせて変えられるところは柔軟に対応していく、「変わらず、変わりつづける」必要があると思うのです。
コワーキングスペースの意義
コワーキングスペースは決して、単なる「ワーク」スペースではありません。
この「単なるワークスペースではない」という視点は、運営者はいつでも意識しておかなければならないと思っています。
もともと「コワーキングスペースをたちあげよう」と思った、その理想を忘れず、単純な収支のみに一喜一憂しすぎず、コワーキングの本来の理念を忘れずにやるという覚悟を持っていないと、なぜ大変な思いをしてまで続けているのか分からなくなったりするでしょう。
Co-Edoであれば「コワーキングスペースに関わる人が物心両面で豊かになるよう支援する」という理念を形にしていくため、日々試行錯誤を行っています。
決して自分のスペースだけをひとりよがりに考えるのではなく、他のスペースにCo-Edoが良い影響を与えられているかどうかなど、今年はより強く、意識してきました。(それが運営セミナーの実施にもつながります)
自分のところが儲かっていればそれでいいという考えでは、全体としての発展には繋がらず、結果として自分の首を絞めてしまうかもしれません。
一方で、スペース自体の収益があがらないと、大切な利用者が行き場を失うことだってあるわけで、この点を無視していても良いスペースにはならないでしょう。
黒船のような企業が海外から進出してくる今日、第1世代型や第2世代型といった、小さくとも、支持してくれる利用者の多いスペースが、大きな波にのまれてしまい、結果として自分たちが理想に思うコワーキングの良い点が世の中に広まらないということにもなりかねません。
それでは自分のスペースの理想を追求するためには、なにが必要なのでしょうか。
自分のスペースの理想を追求するために必要なたったひとつのこと
コワーキングスペースを約5年運営していて思うのは、わたしたち(従来型のスペース)も、スケールメリットを追求するしかないのではないかということです。
もはや資金量の差はいかんともしがたく、一方で今後ワークスタイルの多様化に伴い、増えていくであろうコワーキングスペース利用者は、環境の整った、大きなスペースを求めていくかもしれません。
ひとつひとつのスペースはそれぞれ魅力的だとしても、「それらを全部使えるなら」契約するという企業もあるでしょう。
スケールメリットを得るためには、既存のコワーキングスペースが、協力し合うことでしかなしえません。
団結すれば、ひとつひとつのスペースの魅力は、掛け算となって増していき、巨象にも対抗できるかもしれないのです。
まとまることでできることは、たとえば次のようなものがあるでしょう。
- コワーキング全体の広報活動
- 共同購入によるコストダウン
- スタッフ教育支援によるサービス向上
- 採用支援による良質な人材の活用
- 運営相談・運営支援による運営効率の改善
- 利用者の横断的なスペース利用を可能にするコワーキング・パスポート
- 利用規約や契約書等のテンプレート利用
- 会員管理システムや決済サービスの利用
- これから始める人に対するコワーキングスペース設立支援
- 運営代行による少リソース化
ほかにも、ひとつひとつのスペースではリソース的にできないことでも、全体最適にすることで得られるメリットは大きいでしょう。
もちろん、各コワーキングスペースはそれぞれ別の事業体ですから、このような取り組みが簡単にできるとは思っていません。歩調を揃えて何かをやっていくというのは、困難がつきものです。
しかし「小異に囚われずに、大同に従って行動すること」をしないと、すぐそこまで来ている大波に気づかないままということにもなりかねません。
「いまはまだ必要ないのではないか」とか「うちは儲かっているからいい」「自分のスペースのことで頭がいっぱいで余裕がない」などというように考えていれば、あっという間に、波に飲み込まれてしまうことでしょう。
大手企業が、いまあるコワーキングスペースを活用しようとしているのに、誰に連絡すれば良いかもわからないというのは、とてももったいないことのように思います。
運営者同士で悩みや課題を共有し、いっぽうでベストプラクティスを構築していけば、今より良いスペース運営ができるのではないでしょうか。
というわけで準備を進めています
この話自体は、1年以上前から話を進めようとしているのですが、なかなか時間がかかる感じでした。
が、先日ようやく、スタートを切りました。登記等については先に少数のコワーキングスペース運営者で進めたことで、一段落しています(正式なアナウンスだけ、今しばらくお待ちくださいませ)
いますぐ連絡したいという方は、 info@coworking-japan.org にご連絡ください。
コワーキングスペースの運営者の方は、とりあえず暫定の
Facebookページと
Twitterアカウントをフォローしていただきつつ、アナウンスをお待ちください。
中途半端な案内で申し訳ないですが、ぜひともご協力いただけたら嬉しい限りです。
引き続き、各スペースが、自分のスペースの理想を追求するために、それぞれ頑張っていきましょうね!
というわけで
コワーキングスペース運営者限定アドベントカレンダー Advent Calendar 2017」3日目の参加エントリーでした。
明日は
Hanare ひばりヶ丘の
新妻正夫さんの「
近くに行ったら立ち寄りたい街角コワーキングスペースのすすめ」です。
以下、告知です。
Co-Edoは⑤周年を迎えます
Co-Edoは2017年末〜2018年初も大晦日・元日含め年中無休です。ことしも「Co-Edoは初詣スポット」を合言葉に、おみくじや絵馬やお菓子つかみ取りなどを提供するほか、元旦は(なぜか10時5分から)初日の出を見たり、カウントダウンを行ったりという冗談のような企画を考えています。
まあ普通に作業できる環境を用意していますので、お正月にのんびりと作業していただけたら嬉しいです。
また年明け1月7日(日)にグランドオープンから丸5年を迎えます。
そこで「『Co-Edo⑤周年感謝祭』〜⑤年分の😊笑顔を🤗シェアする⑤日間〜」と題し、5日間連続で(!)イベントを実施しようと思います。
ほかではやらないことをやるというのは、自由な発想で何事にも取り組むCo-Edoのひとつの特徴ではあるのですが、今回は「⑤周年なので⑤日連続で行う」ということにしました!
通常の交流会のほか、謎解きイベント、茅場町・Co-EdoのCM(!)、アクターズフールや東ゲ部のイベント、リーマンサット・プロジェクトに協力してもらって「縁日」をしたりということをします。
期間中はコエドビールの伽羅を生ビール(樽)で飲めます。(コエドビールさんにも一部協力いただいています)
もちろん通常の勉強会による利用や、グループ利用を含めたコワーキングも可能です。せっかくなので、最近Co-Edoにいらっしゃってないというかたも、これを機会にぜひどうぞ。
『Co-Edo⑤周年感謝祭』〜⑤年分の😊笑顔を🤗シェアする⑤日間〜イベントページ(作成中)
ぜひ来てくださいね!