2014年12月10日水曜日

コワーキングスペースを世代別に考えてみて想うこと

どうもこんにちは。 コワーキングスペースについて 『今』いちばん熱く語る男というあだな をもつ、コワーキングスペース茅場町 Co-Edoの田中弘治です。
先日あらたに鉄人の称号もいただきました(笑)

この記事は、コワーキング Advent Calendar 2014の10日目の記事として書いています。
昨日は、miMemo(ミメモ)みう(@miu0512) さんでした。([M]フリーランスWeb屋の私が、今の「コワーキングスペース」に求めていること #cowjpadv2014
ちなみに明日は大阪のコワーキングスペース : Osakan Space (オオサカンスペース)大崎弘子さんです。

このアドベントカレンダーは、コワーキングにまつわる記事をみんなで書く、ということで「運営者リレー」をしているわけではありません。 というわけで、運営者ではあるのですが、コワーキングスペースの利用者の方も楽しめる記事にしたいなと思って書いていきたいと思います。

この記事に出てくるコワーキングスペースは、わたし田中が、訪問したことがあるスペースや
お会いしたことのある運営者のスペースが中心です。
とくに意味があるというよりは、あまり繋がりが広くないので、その程度しか知らないので、
名前が出ている・出ていないスペースに違いがありませんので、ご留意いただければ幸いです。


自分に合ったコワーキングスペースを見つけよう

コワーキングスペースが日本に生まれてから4年が経ち、非常に多様化してきました。
それぞれ特色があり千差万別ななか、どれかだけがコワーキングスペースとして正解というものでは決してありません。

すべてがコワーキングスペースであり、そこには、自分の利用用途にあったスペースとそうではないスペースがあるだけです。
この記事では、コワーキングスペースを分類していくことで、自分の利用用途にあったスペースを見つける一助にしていただきたいという想いと、今後コワーキングスペースはどのように発展していくのかということを考えるための共通言語にしたいという想いで書いています。

コワーキングスペースを分類しよう

世代別に考える前に、別の視点で分類してみたいと思います。

シェアオフィス型とドロップイン型

コワーキングスペースを分類するときに、もっとも分かりやすいのは「利用の形態」で分類することでしょう。
現在、コワーキングスペースとしては、概ね次のような分け方ができそうです。
  1. シェアオフィス型
  2. ドロップイン型
  3. ハイブリッド型(シェアオフィス+ドロップイン)
シェアオフィス型とは、 利用者の中心が月額会員のスペース のことで、月額1.5万〜5万円くらいが2014年12月現在の中心価格帯だと思います。このタイプの例としては、Osakan Space (オオサカンスペース)co-ba shibuya(コーバ 渋谷)などがあります。

一方でドロップイン型とは、 利用者の中心が一時利用のスペース のことで、1日利用で1,000円〜1,500円くらいが2014年12月現在の中心価格帯だと思います。このタイプの例としては、わたしの運営するコワーキングスペース茅場町 Co-Edoや、下北沢オープンソースCafeなどがあります。

どちらのタイプも、どちらか一方だけでやっているということはありませんが、事業者視点で見ると、前者は 月額会員を増やすためにドロップインをやっているためドロップイン価格が高くなる傾向 にあり、後者は反対に月額会員価格が低くなる傾向にあります。

ハイブリッド型はその両方を取り込んでいるスタイルです。比較的規模の大きなスペースはこのタイプが中心といえます。

世代別の分類

現在、コワーキングスペースは日本にいくつあるのでしょう?一説には300以上といわれていて、細分化が進み、もはや上述の分類では捉えきれなくなってきていると思います。

そこで、時系列でコワーキングの(短い)歴史をみて、どのような変遷をたどってスペースが変わってきたかという視点で見てみたいと思います。
  • 第一世代型
  • 第二世代型
  • 第三世代型


項目 \ 世代 第一世代型 第二世代型 第三世代型
中心となる年代 2010~2012 2012~2014 2013~
オーナー 個人等 小規模法人等 法人
広さ 5~25坪程度が中心 20~80坪程度が中心 100~200坪以上など
物件 自宅や自社のオフィスをシェア 自社のオフィスをシェアするか、コワーキングスペース用の物件を契約 コワーキングスペース用の物件を契約
スタッフ いないところが多い 協力者もしくはスタッフ等 アルバイト・社員が常駐
ノラヤ コワーキングスペース茅場町 Co-Edo CASE Shinjuku

この表は、あくまで目安ですので、すべてのスペースがこのように分類されるかどうかは分かりませんが、ここでは、時期とともにスペースの形態が変化してきたということが伝えられたら良いなと思っています。

また、たとえば2014年に第一世代型のコワーキングスペースが生まれないということではありません。とはいえ、今後は「新規の」第一世代型のコワーキングスペースは少なくなっていくと思います。

はじめに大事なことをお話しますと、第一世代型のスペースよりも第三世代型のスペースのほうが優れいているという話ではありません。

シェアオフィス型のスペースとドロップイン型のスペースに優劣がないように、世代の違いによって優劣はありません。
(もちろん事業的な違いというのはあります)

このことを念頭においたうえで、読み進めていただけたらと思います。

第一世代型のコワーキングスペースについて

Coworking Magazine Vol.1 コワーキングの今によると、2010年5月に神戸でカフーツが誕生し、その後8月に東京・経堂のPAX Coworkingが、12月に大阪の十三でJUSO Coworkingがオープンしたそうです。

わたし自身が行ったことがある場所でいうと、下北沢オープンソースCafeや、すでにクローズしている「コワーキングスペース恵比寿」など、この時期は(言わずもがなですが)第一世代型のスペースが中心です。

これらのスペースは、黎明期にコワーキングという文化をつくったスペースです。
のちにうまれた大多数のコワーキングスペースが存在するのは、このときに形造られた「コワーキングという文化」が受け入れられたからでしょう。

Co-Edoももちろんこの第一世代型のスペースが無かったら存在しえません。
(わたしははじめて使ったコワーキングスペースでの体験=つながっていく体験が素晴らしかったことが、東京の東側に自分のスペースを持ちたいと考えることになった大きな要因です)

第一世代型のコワーキングスペースの特徴

現在でもつづけているスペースは別として、黎明期のスペースのなかには、収益性を期待せずに始めたところもあったと思います。

まだコワーキングというものが広がっていないなか、自社や知人所有の空きスペースを活用するところから始まったという面が大きく、ビジネスとしてコワーキングスペースを運営するというところはそれほど多くなかったと思います。

スタッフも抱えないなかで始めているため、週1~2日のオープンだったり、営業時間中に行ってみたらオーナーが出かけていて誰もいなかった、ということもあったと聞いています。

わたしは、逆にこのことが 「コワーキング」という良い文化を産んだ と思っています。 オーナーと繋がった人たちが中心にコミュニティができ、それが徐々につながりの輪が広がっていった。そんなイメージを持っています。
コワーキングというものに対し、「コワーキングとコミュニティが不可分」というイメージを持っているかたも多いでしょう。
コミュニティの存在がコワーキングという文化と深く結びついているのは、まさにこの第一世代型のコワーキングスペースの「大きさ」や「運営形態」などと深い関連があると思っています。

第二世代型のコワーキングスペースについて

第一世代が「コワーキングという文化を作った」世代だとすると、コワーキングスペース運営をビジネスとして捉え始めたのが第二世代の特徴といえるかもしれません。
(ここまで読んでいただいていればお分かりだとは思いますが、第一世代型のスペースでも、はじめからビジネスとして捉えていたスペースは複数存在します)

わたしの運営するCo-Edoも「ビジネスであることを強く意識して」始めました。
そのわりには一向に儲かっていないのでその意味では大きなことは言えませんが、それでも丸2年ほど安定的に運営し、先月より2フロア化し拡張したということで、(一応)ビジネスとして失敗しているという状況ではありません。

第二世代型のコワーキングスペースの特徴

わたしが「ビジネス」として強く意識したからこそ行ったことがあります。
それは「営業時間を守る」ということです。
もしかしたらこれを読んでいる方の中には「なにをアタリマエのことを」と思われる方もいるかもしれません。

第一世代では「コワーキングという文化」が作られることに重要性があり、それはとりもなおさず「オーナーを中心としたコミュニティ」と不可分です。
この時期、行ってみたらオーナーが外出していたとしても、利用者から不満が出ることは無かったはずです。
オーナーも人間ですから、トイレにいくこともあれば食事や買物に行くこともあります。それを「するな」というひとは、すくなくともこの時期は多くなかったと思います。

しかし、ビジネスとして考えている第二世代のコワーキングスペースは、このことが非常に重要になってきます。
9時から22時まで営業している喫茶店に、9時ちょうどに行ったらまだ準備中だったり、21時50分ころ忘れ物をとりに行ったらすでに閉店していたということがあったら、不満も出ると思います。
同じように、コワーキングスペースの公式サイトでうたっている営業時間に行ったにもかかわらず「開いてなかった」という体験は、いち利用者としてみたら経験したくありません。

わたしと同時期にオープンした大宮のコワーキングスペース7Fのオーナーの星野さんが言っていましたが、当時よく「今日(もしくは今)オープンしていますか?」という電話がかかってきたそうです。年中無休を知っている利用者からもです。
営業時間中にオープンしているというのは当り前のことなのに、そのような確認をする状況を残念に思っていたようです。

第一世代の(コワーキングという文化を生み出した一方で)オーナーが個人運営しているがゆえにケアできていなかったやむを得ない制限を、ビジネスとして運営しだした第二世代のオーナーは「やむを得ないこととしなかった」といえます。



第三世代型のコワーキングスペースについて

第二世代がビジネスとして捉え始めたといっても課題が残ります。それは、スペースの大きさ以上の収益は生まないということです。
第二世代型の多くのスペースは人を雇えるほどの収益性がありません。(もちろん7Fやオオサカンスペースのようにスタッフを雇って利益を出しているところも少なくありませんが)
第三世代型のコワーキングスペースが生まれた背景はいくつもあると思いますが、ひとつに「事業としてのコワーキングスペース経営」というものを意識した事業者が出てきたということが大きいと思います。

第三世代型のコワーキングスペースを思いつくままに挙げてみます。
(順不同・基準は独断と偏見です)
ほかにもClipニホンバシ by 三井不動産株式会社コインスペース 東急プラザ 渋谷店のような資本力のあるところも含めると相当な数にのぼります。

第三世代型の規模になると初期費用も数千万円以上となると思います。
コワーキングスペースという事業にこれだけのお金が集まるようになったということは、とりもなおさずコワーキングという文化の価値が広まってきたということでしょう。

第三世代型のコワーキングスペースの特徴

広いスペースを持つ第三世代型の多くは、「オープンスペース」なエリアと「固定スペース」の双方を持っているというところがほとんどです。

収益の安定性を求めるとどうしても月額会員を、それも高額な会員を増やす必要があり、そのため高級になったり広いスペースを割り振ったりということになるのかと思います。
第三世代型のスペースが長期的に継続していくためには、(それまでの属人的な運営とは逆に)いわばマニュアル化された運営が必要になっていくでしょう。

そして利用者層を拡大し、場合によっては「コワーキング」という言葉を知らないひとたちを幅広く取り込んでいかなくてはなりません。
利用用途も多様化し、図書館や喫茶店の代わりとして利用されたり、今後はコミュニティと無縁のユーザーが生まれていくと思われます。

各世代のどれが自分に合っているのか

このように世代別に見てみると、従来のコワーキングがよりコミュニティというものとの結びつきが深く、今日のコワーキングスペースが第三世代型のスペース中心となり、その反対の傾向に向かっているということが分かります。

以前からコワーキングスペースというものに馴染みがある方のなかに、しばしば、最近生まれたコワーキングスペースというものを快く思っていない方がいますが、それはこのような理由が関係しているのではないかと思います。

利用者視点で見ますと、選択肢が広がったわけですから、これは歓迎すべきことでしょう。

運営者のなかには、コミュニティとしての繋がりが薄いスペースを評価しない方もいるでしょうが、今後はもっとスペースが多様化していき、もっと利用者のニーズも多様化していくことでしょう。

あくまで個人的な意見ですが、運営者である前に、ひとりの利用者として、コワーキングスペースが増え、そして多様化していくというのは基本的には歓迎すべきことと思います。

(もちろんわたしは第一世代型のコワーキングスペースが形造った「コワーキングという文化」が大好きですから、その方向性を大事にしてCo-Edoを運営していくつもりですし、「コワーキングという文化」が気に入っている利用者に使ってもらえるようなスペースづくりをしていくつもりです)

第三世代型のスペースに負けないように

わたしはコワーキングスペースの運営者同士とは仲間意識があります。 厳しい環境に身を置く者同士じゃないとできない話もありますし、それぞれ運営の目的が違ったとしても、リスクを背負って(場合によっては人生をかけて)戦っていることに違いはありません。

大宮のコワーキングスペース7Fのように上手くいっていると、運営者が苦労をしていないように見える人もいるようです。
もちろん、いち利用者としてみたらそれで「まったく問題ない」のですが、コワーキングスペースの運営を考えているひとがそれだと、良いスペースを作っていくことはできないでしょう。

7Fのようなスペースの運営者は、他のスペース以上の苦労をしているはずで、 少なくともCo-Edoが抱えている課題とは比べ物にならないほど大きいと思います。
(わたしもそのステージに上がれるように日々努力をしているつもりですが、まだまだ影も踏めません)

Co-Edoも7Fを見習って、純粋な第二世代型からの脱却を図ろうとしています。(Co-Edo2.5世代化と呼んでいます)

数千万円もの予算を使って作られたスペースがあるなかで、第一世代型や第二世代型のスペースも利用者に今後も継続的に選んでもらえないといけません。
いわば、象とアリの戦いです。
危機感を持って運営していかないと、あっという間に「利便性の高いスペース」に負けてしまいます。

従来型のスペースは、どのように活路を見出すべきでしょうか。
反対にいえば、利用者は、何を求めて従来型のコワーキングスペースを選択するでしょうか。(ちょうど昨日のみう(@miu0512) さんの記事がそのテーマでしたね)



キーワードはコミュニティ

コワーキングスペースごとの特色は、得てして、利用者によって作られます。
利用者同士が結びついていればいるほど、コワーキングスペースとしての価値が大きくなっていきます。

第三世代型のスペースが、ユーザーの利便性を高めることでスペースとしての価値を大きくしようとする一方で、従来型のコワーキングスペースはコミュニティとしての結びつきを深めていってスペースとしての価値を大きくするのだと思います。

もちろん第三世代型のスペースのなかにも、コミュニティとしての価値を大きくしようとしているスペースはありますので、それだけではいけません。

Co-Edoはコミュニティとしての価値を大きくする努力を続けながら、今後は、第三世代型のスペースがもつ利便性を「貪欲に」取り入れていこうと考えました。

コワーキングスペースの多様化、ユーザーの多様化に伴い、あるとき 多様化するユーザーのニーズに対応する必要性を強く感じたから です。

とはいえ、たとえばパセラのコワークのような設備をCo-Edoが揃えられるわけはありません。 それはそれで努力をしつつ、大事なことはコミュニティとしての価値を大きくしていくことだと思っているのです。

コワーキングAdvent Calendarの記事を読んでいるみんながコワーキングという文化を育てる

コワーキングAdvent Calendarに参加している方々、また、ここに書かれた記事を読んでいる方々は、おそらく、従来からある「コワーキングという文化」が好きなんだと思います。

わたしもそのひとりとして、コワーキング文化を広げるために、この記事を書きました。
今後もコワーキングという文化は発展していくことでしょう。 一方でおそらく、もっと多様化したコワーキングスペースが生まれていくことでしょう。

アメリカ在住のある友人は「コワーキングスペースというものは老若男女が認知している」と言っていました。 日本も数年したらそういう状況を迎えることになるかもしれません。

そのときに、これを読んでいるあなたが理想とするスペースが中心になっていると良いですね。




明日は・・・

大阪のコワーキングスペース : Osakan Space (オオサカンスペース)大崎弘子さんです。
先日ひさしぶりにお会いしまして、Co-Edoをはじめてからははじめてだったので、夜遅くまで運営者トークをいたしました。

そのときの話もとても参考になりましたが、明日のアドベントカレンダーの記事も、とても楽しみです。




イベント告知

お時間のある方はぜひご参加ください!

2014年12月13日(土) 19:00~21:00 (18:30開場) 
【場所】 本屋B&B (東京都世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F )